REPORT

まちの植物図鑑―夏―

2022年7月23日

7月23日(土)9:00~11:00

参加者:9名(うち1名は小学生)

 

【案内人】山下航平(信州大学教育学部 理科教育コース)

しょくぶつはかせ目指して修業中。好きな花はオオイヌノフグリ。好きな葉っぱはダンコウバイ。甘いものをあげると喜びます。

 

【コース紹介文】

まちなかの森や路地裏の植物をめぐります。普段何気なく歩く道、ちょっと立ち止まって植物たちの生きざまをのぞいてみましょう。
※飲み物や帽子など暑さ対策を

 

【コース】

楽茶れんが館

善光寺周辺
夏の暑い日差しの中、力強くかわいらしく生きる植物たちを訪ねます。どんな植物が見られるか楽しみです。

信州大学教育学部 キャンパス
門前周辺ではあまり見られないブナ、ユリノキ。ミズナラなどのレアキャラが見つかるかも。葉っぱのギザギザや大きさなど見分けのコツもお伝えします。

nanatarte
タルトがおいしい洋食屋さんでお好きなものをテイクアウト。ちなみに私はいつもいちごタルトを買います。 ※実費必要

ひまわり公園
オフィス街にあるコンパクトな森でタルトをいただきながらホッと一休み

 

 


 

本日のまちあるきは山下航平さん(信州大学教育学部 理科教育コース)の『まちの植物図鑑―夏―』。

まちの森や路地裏で、力強くかわいらしく生きる植物たちをめぐります。

 

まずは表参道沿いの駐車場へ。

コンクリートの割れ目に生えたいろいろな植物を見ていきましょう。

 

 

山下さんがまず説明してくれたのが「メヒシバ」。

イネ科の植物で、山下さんをも「まだ勉強中です」といわしめる膨大な種類があるそうです。

(子供の頃、先端を小包みたいに結んでよく遊んだなぁ…)

左手に持っているのは「ねこじゃらし」。正式名称は「エノコログサ」と言うのだとか。

 

 

次第に「この名前は?」「こっちは?」と参加者の方々の質問もエンジンがかかってきました。

「まちの植物図鑑」シリーズ、おなじみの光景のはじまりです(笑)

 

駐車場でじっくりQ&Aを行った一行は、官庁通り商店街から路地裏へ。

 

 

少し湿った日陰に生えていたのは「ヨウシュヤマゴボウ」。

鮮やかな紫色の実は染料として重宝されているそうですが、毒を持っているので食べるのはNG。(ただの「ヤマゴボウ」は人間も食用可)

でも鳥には無害らしく、その実を食べた鳥が種を運んでくれるそうです。

「種をどう運んでほしいか」によって、花の色や咲き方、毒性などが決まってくるとか。

山下さんいわく「それが植物たちの生存戦略」。おもしろいですね~

 

 

側溝に咲いていたのは花がかわいい「オニタビラコ」。

「オニ」なんていかつい響きが意外ですが、もっと小さい「コタビラコ(春の七草のひとつ)」という種類もあるんだそうです。

 

 

大きな木「ニセアカシア(マメ科)」の根元には…

 

 

ハキダメギク(ひどい…)なる可憐な野草も咲いていました。

「日本の植物学の父」とも呼ばれた牧野富太郎が発見した植物だそうです。

牧野富太郎は秋から始まるNHK朝ドラの主人公にもなっているそうですよ。

 

 

お次は西本願寺長野別院の駐車場へ。

 

 

直射日光の当たらない駐車場わき(砂地)にはどんな植物たちが生きているでしょうか。

 

 

けっこう多く見られたのが「ハルジオン」。

「ヒメジョオン(ヒメジオン)」とともによく聞く名前ですが、2種類の違いは茎を折ってみると分かるそうです。

 

 

こんな風に茎が詰まっているのが「ハルジオン」。

「ヒメジョオン」は中が空洞になっているそうです。

 

 

コンクリートの路地をに咲く植物たちも観察しながら西町方面へ。

道中、排水溝から抜け出せずにもがいていたオニヤンマの救出劇もありました。

写真手前に映っている植物は「トゲチシャ」。

 

 

葉の裏にけっこう鋭いトゲがあります。

 

 

ねこじゃらしと一緒に生えていたのはとっても可憐な「ヒメフウロ」。

 

 

良く見ると本当にかわいい。

ただ別名は「塩焼き草(シオヤキソウ)」で、塩を焼いたときの匂いがするそうです。

たびたび感じる植物の見た目と名前のギャップ問題…

 

 

その後もこんな風に、

 

 

足元をよ~く観察して

 

 

時には側溝に片足を入れつついろいろな植物たちを見つけました。

ちなみに側溝わきで山下さんが手にしている植物は

 

 

「ギシギシ」(これまたユニークな名前)。

 

 

ここで歩きながらクイズ。

花の色で一番多いのは何でしょう? ①白、②黄色、③赤~青、

 

正解は……白です!

花の色には「どんな虫に見えてほしいか」という狙いが込められていて、それも自分では受粉できない植物の生存戦略のひとつだとか。

花の咲く向きも「上向き」はどんな虫もウェルカム!(受粉得意不得意不問)で、「下向き」はつかまるのが得意な虫限定!(受粉に有利な虫のみ)の意思表示。

植物の形や色は、すべて「子孫を残す」目的のためにあるんですね。

 

 

民家の石垣に生えていたのは「マツバギク」。

 

 

多肉植物の一種で、水分をたくさん蓄えているため暑さにも強いはなだとか。

たしかに強い日差しの中でもへたらずピンと咲いています。

 

 

こちらのすくすく伸びている植物も、

 

 

実は似ているようで「ヒメムカシヨモギ」と「オオアレチノギク」という全く別物の植物。

茎に対して葉っぱの付き方で見分けるそうです。

 

 

こちらは「ヘクソカズラ」(いやはや本当にひどい…)。

 

 

この時点で約30種の植物を観察して、一行は山下さんが学ぶ信州大学教育学部へ。

 

 

駐輪場手前の茂みにでもたくさんの植物を観察しました。

 

 

おもしろかったのは「カタバミ」。

夜になると葉が閉じて片面だけになることからついた名前らしいですが、この葉っぱで10円玉をこすると…

 

 

ピッカピカに!

これは、カタバミの葉っぱに含まれる「シュウ酸」という成分が起こす化学反応の効果だそうです。

 

 

そんなこんなで大学裏手で「野いちご」を発見したり

 

 

 

木材としても有名な「桐」の木を見たり、

 

 

(桐の実も…)

 

 

ぐるっと構内を一周して、

 

 

Tシャツみたいな葉っぱの形をした「ハンテンボク」を見た後に、

 

 

「ギザギザハートの葉っぱ」と覚える長野市の市木「シナノキ」の下で今回の「まちの植物図鑑」を「完」としました◎

本日観察した植物は合計51種類!

 

 

その後は、山下さんが用意してくれたメニュー表を見ながら

 

 

人気のタルト屋さん「nanatarte」へ。

 

 

思い思いのタルトを買って、ひまわり公園でおやつを堪能しました◎

 

 

食後もやっぱりみなさんの興味は植物談義(笑)

 

 

まちあるきのお供におもしろそうな本もたくさん紹介していただきました。

 

 

各所に見所やエピソードがあって、きっと山下さんが学業の合間に下調べでいろいろなところを歩いてコースを考えてくれたんだろうなと感謝でした。

 

わざわざ遠くに行かなくても、私たちの身の回りには「知らない世界」がたくさんありますね。

「まちの植物図鑑」シリーズ次回へ続く◎

 

(大日方)

 

門前、朝の探鳥会

2022年7月20日

7月20日(水)6:00~8:00(参加者13名)

 

【案内人】榊原美奈子(日本野鳥の会 長野支部 会員)

建築会社→パティシエ→カフェ店員→WEB制作会社→温浴・飲食事業の企画部門を経て、現在トリとコケを見る日々。
野鳥観察歴5年目。小冊子“野鳥のススメ”を作成・配布中。

 

【コース紹介文】

身近にトリっているものです。
スズメ、ハト以外にも門前にはいろんな野鳥が暮らしています。
トリに興味を持ったなら、一緒に探鳥に出かけてみませんか?早朝の門前界隈をお散歩しながら
オススメポイントを訪ねます。

※双眼鏡をお持ちの方はご持参ください。お持ちでない方にはお貸しします。
※雨天の場合は、まちなかのトリモチーフを訪ねます。

 

【コース】

楽茶れんが館

竹井神社
まずは今日一日の安全祈願。大きな木にやってくるトリを探しながら野鳥観察の基本をご紹介します。

西宮神社
トリってどんなところに巣をつくるの? スズメの巣のお話をしながら営巣の邪魔をしないようにそーっと通り過ぎましょう。

城山公園周辺
トリに出会えるオススメポイント。7月は木々が茂って野鳥を見つけにくい時期ですが、みんなで探しましょう。コケも観察。

うみなつ珈琲
朝8時からのモーニングプレートは探鳥後の朝食に◎ トリの置物や本もたくさんの心地よい喫茶店で今日みた野鳥の“トリアワセ”をしましょう。※実費必要

 


 

 

本日は榊原美奈子(日本野鳥の会 長野支部 会員)さんの『門前、朝の探鳥会』でした。

 

榊原さんはお手製のトリ指し棒(かわいい)を手に持ち、

 

 

参加者の方々も榊原さんお手製のブローチ(かわいい)をいただいて

 

 

思い思いの場所に付け、

 

 

いざ、出発!

 

 

お、いましたいました。

駐車場やブロック塀、屋根、電線…

気づけばトリさんたちは私たちの近くにたくさんいます。

 

 

トリさんの名前や鳴き声、特徴などをその都度教えてくれる榊原さん。

肉眼では捉えられなくても鳴き声や飛び方で種類を見分けることもできるとか。

「この時期くちばしが黄色いスズメは生まれて間もない子どもスズメ」

「子どもスズメはほっぺ(ニュウ)の茶色が薄い」

など、観察ポイントも満載です。

 

 

ありがたいことにスタート直後からたくさんの鳥さんと出会えたので、ようやく一ヵ所目の武井神社へ到着。

 

 

本日の鳥さんとの良縁を祈願してから、厳かな気持ちで境内を探鳥。

双眼鏡は

①太陽を見ない(失明の恐れ)

②民家の方向を向かない(覗き見の誤解を回避)

このふたつに注意して使いましょう。

 

 

神社の彫刻にもトリモチーフは多く見られるそうで、野鳥と出会えなくてもいろいろな探鳥の楽しみ方があるようです。

 

 

3羽のカワラヒワ。

肌色のくちばしと羽の黄色が特徴。

(かわいい…)

 

 

境内の西側「虎小路」を通って西宮神社へ。

道中では榊原さんが蔵の窓付近を指さし

 

 

「スズメって、こういう隙間に巣を作るんですよ~」と解説してくれました。

(全然撮れていませんが…汗)

 

 

西宮神社はスズメの営巣の邪魔をしないようにそーっと通り過ぎ、岩石町の建物で再びスズメの巣を発見。

 

 

今度は見えるでしょうか?!

わらが少し飛び出している部分です。

スズメは警戒心がとても強く、巣に入る時は近くから徐々に距離を詰めていって誰にも見られていない瞬間にスッと入っていくそうです。

 

 

向かい側の屋根の下にもこのスズメさんのお宅らしき巣が見えましたが、17名の人間の視線があったので入る様子は見られませんでした。

榊原さんによると「ギギギギギギ…」と警戒音で鳴いていたそうです。

(スズメさん、お邪魔しました)

 

 

善光寺周辺に何ヵ所かある用水路は鳥さんの水浴び場。

絶好の探鳥スポットです。

 

 

ほかにも城山小学校のプールでも水浴びの鳥さんが見られるとか。

 

 

トコトコ歩いている姿をみせてくれたハクセキレイ。

 

 

健御名方富命彦神別神社の境内を通って、長野地方気象台方面へ。

 

 

道中で一番見られたのはカワラヒワ。

榊原さんと鳥に詳しい参加者の方いわく「本日はカワラヒワ祭り(たくさん見られる)」だとか。

 

 

姿は見えませんでしたが、アオゲラの巣も発見。

乾燥した柔らかい木に巣穴を掘るそうです。

穴の円形が美しすぎる~

 

 

時間が押してきたので、城山公園周辺散策は深入りせずに出会える鳥さん情報をお話しいただきました。

 

 

テニスコートわきの水路は鳥さんに出会える絶好のスポットだとか。

虫がとても多いのと、橋から下を覗きすぎて飛び降りる誤解を与えるのに注意して、適宜双眼鏡を眺めながら探鳥するのがポイントです。

 

 

ちなみに!

「子どもスズメはほっぺ(ニュウ)の茶色が薄い」という解説がまちあるき前半でありましたが、ほっぺ(ニュウ)が元々ないスズメもいるらしいです。

その名も「ニュウナイスズメ」。

榊原さんのトリ指し棒のスズメも「ニュウナイスズメ」で、参加者の方のブローチにも一羽だけ混じっているそうです。

榊原さんの遊び心とサービス精神に脱帽。

 

 

と、ここでなんと突如として道向かいの竹やぶにアオゲラを発見!

一同大興奮で双眼鏡を構えます。

「どこどこ?」「あそこ!」「あ、見えた!」「わぁ!」

 

 

「カワラヒワ祭り」も嬉しかったですが、アオゲラにも出会えて最後にびっくりなご褒美でした。

そして一行は朝食を摂りに桜枝町の「うみなつ珈琲」さんへ。

 

 

本来店休日だったところをこの探鳥会のために特別オープンしてくださったそうで、感謝です!

 

 

榊原さんから本日の探鳥会を振り返ることができる地図と、オリジナルの小冊子「野鳥のススメ」をいただき、

 

 

各自、うみなつさんのモーニングプレート(一品一品主役級においしい)を味わいながら

 

 

本日の振り返りなどに花を咲かせて過ごしました。

 

 

「野鳥の会」では探鳥会後に必ず「トリアワセ」なる時間を設け、当日出会えた鳥をお互いに列挙するそうです。

本日は全員で「トリアワセ」ができなかったので、榊原さんが後から“本日のハイライト”入りのトリアワセリストを送ってくださいました◎

 

 

トリへの愛もさることながら、イラストや文章にあふれるセンス…

いただいたトリブローチのスズメさんも、早速デスクのカレンダーにとまってもらいました。

かわいすぎるトリさんの商品化を熱烈に希望します(笑)

 

 

鳥さん目線で木や屋根を眺め、鳴き声に耳を澄ませて「おじゃまします」の心持ちで歩いた今回のまちあるき。

見慣れた場所を歩いたはずなのに別世界を散策しているような気持ちになりました。

 

トリ好きの方々の人生の楽しみ方もとてもまぶしかったです。

 

(同行:大日方)

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