REPORT

わが青春の寺山修司、その軌跡をたどる

2018年6月15日

13:00~15:00
参加者:  4人

 

【案内人】中沢清

あかりとアンティークの店「WAKO SHOMEI」店主

 

 

【プロフィール】

「WAKO SHOMEI」の店主であり「演劇実験カフェシアター」の座長。40年にわたり寺山修司の作品を上演している。20代の数年間、寺山修司主宰の天井桟敷に在籍。

 

 

 

【コース案内】
かつて寺山さんは言った。体の調子さえ良ければ、人間何見ても面白いんだと。「歩く」ことで見えてくる街の見世物性。
かつて出会った懐かしい風景、物、店。
私の中の寺山修司とともに、いざ街へ出かけよう。

 

 

 

 

 

【コース】

ハーロンヌービル(東欧雑貨)

当時誰も見向きもしなかった東欧、ポーランドでの海外公演。「西」から訪れた劇団は彼らの目にキラキラと眩しく映ったに違いない。今や東欧はエキゾチックな魅力で私達を虜にする。

劇団唐組特設テント

劇団「天井桟敷」のライバルであった唐十郎率いる劇団「状況劇場」。乱闘事件など数々のエピソードを残しつつ、その子宮に見立てた巨大な「紅テント」とともに今もなお脈々と生き続ける劇団「唐組」が今年もまた長野にやってくる。

団地堂

レコード、古本、雑貨、おもちゃ…。昭和の懐かしいものがあふれている。

純喫茶ロン

寺山修司が演劇をはじめた時代を彷彿とさせる喫茶店。入口のドア、照明、テーブル、メニュー、店主。そのどれもが愛おしくてたまらない。魅力的な空間。

和光照明(番外編)

あかりとアンティークに囲まれて蓄音機で寺山修司監督作品「田園に死す」のサントラを聞く

 


 

今日ご参加のみなさんはなんだか熱心な方が多い印象。

中沢さんのお話を聞き漏らすまいと、しっかり近くに付いて出発です。

 

と、ここでさっそく寄り道。

 

武井神社の「雷電の力石」です。

かつて江戸から巡業に来ていた大関「雷電」が、鐘鋳川からここまで運んできたとか。
「寺山修司とは関係ないけど、街並みを舞台装置のようにひとつひとつ読み解いていくと楽しいよね」と中沢さん。

 

 

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そして最初の目的地「ハーロンヌービル」へ。

ここは昨年12月にオープンした東欧雑貨のお店です。

2階部分では「オルゴナ」という予約制ヒーリングサロンも営業中。

 

 

 

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置かれている雑貨はポーランドやハンガリーで店主の方が直接買い付けたもの。

寺山修司は1973年10月、ポーランド国際青年演劇祭の招聘で天井桟敷の『盲人書簡』を公演したのでした。
ともに公演を回った当時のエピソードを混じえつつ、「これなんかかわいいよね~」と参加者の方々と店内をまわる中沢さん。

 

 

 

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中沢さんが手に取ったのは、丸みを帯びたマグカップ。

ポーランドの伝統的な模様の一つ「ピーコック(孔雀)」の模様です。
藍色が美しい。

 

 

 

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ハーロンヌービルを出て、目と鼻の先にある西宮神社へ。

先ほどの異国情緒あふれる空間から雰囲気が一変。

まるで廻り舞台が一転したかのような気分になりました。

 

 

 

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お参りを終え、「今日はふだん通らないような道から城山公園に行くからね」と中沢さん。

いつの間にか小さな川にかかった橋に着きました。

あじさいが綺麗に咲いています。

 

 

 

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「よーし、今日のハイライト!」

石階段を登ります。

こんな場所あったんですね~と参加者の方々はびっくり。

 

 

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着いたのは萬佳亭のたもと。

ここから平坦な道をひたすら歩くと城山公園が見えてきます。

 

 

着いたー!!

 

 

 

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そこで待ち構えていたのは、迫力満点。劇団「唐組」の赤テントでした。

明日から二日間「吸血鬼」という公演がここで行われます。当日は近隣から屋台なども出てあたり一体がとても賑やかに…。

毎年、公演と共にここで創り出される場の雰囲気を楽しみに来られる方もたくさんいるのだそうです。

 

テントの中はどうなっているのでしょうか。

公演前の様子をご了承を得てみんなで覗き見。

 

 

 

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寺山修司の劇団「天井桟敷」とライバル関係にあった唐十郎率いる劇団「状況劇場」。その精神が子宮に見立てた巨大な赤テントとともに今もなお脈々と引き継がれているのが劇団「唐組」です。

 

ポスターを見ながら参加者の方がぽつり。

「東京、大阪、長野、静岡って、長野が入っているのが不思議ですね」

 

それに対し中沢さん。

「唐さんは長野に訪れたことがあって、単純に気に入っちゃったんだよね。それに、こうやって毎年受入れを全面的に支えている人々がこのまちにはいる。長野って、大きな劇団とかはないけれど、個々でおもしろいことをやってる集まりがたくさんあるんだよ」

 

 

 

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城山公園から宿坊通りを通って下ります。

 

 

 

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「あ、ちょっとここに入ってみたいです!」

と、参加者の方のリクエストでシフォンケーキ「菓恋」さんに寄り道。

みなさんお好きなものをお買い物されていました。

 

中沢さんを「先生!」と呼びつつ、わりとみなさん自由な空気。笑
それがなんだか楽しいです。

 

 

 

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権堂アーケードに着いて団地堂さん。

懐かしいものがあふれる店内。

 

 

 

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不思議とまた異空間に迷い込んだような気持ちになります。

不規則な店内の配置にもわくわく。

予想もしないものが隣同士に並んでいたりするので、一つ一つ目を留めているとあっという間に時間が過ぎててしまいます。

 

 

 

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アーケードを通って、最後のお茶休憩「純喫茶ロン」へ。

こうやってみるとアーケードもまたステージのような雰囲気を感じたり。

 

 

 

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「どんな印象を受けるのか」というのは物の配置などのちょっとした舞台装置でがらりと変わるそうです。

皆さんの後を歩きながら、私たちは街並みのどんな点から何を感じているんだろう…とふと考えてしまいました。

 

 

 

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「純喫茶ロン」に到着。

参加者の中に「今日はこの喫茶店に入ってみたくて参加しました」という方がいらっしゃいましたが、それも納得。

なんとなく、なぜか、なぜだか入るのに勇気がいりそうです。

 

中沢さんいわく、この厚いアクリル板の扉がそうさせているのだとか。

 

妖艶に光を放つ紫色の扉。

その向こうにはどんな世界が待っているのでしょうか。
イメージ的にはタバコを片手にしたけだるいママが「いらっしゃい」と出迎えてくれそうな…

 

とにかく何か自分の普段の世界とは異質のものが待ち受けていそうな気がします。

 

 

 

 

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ギイッ…

 

 

扉を開けたら一同逆の意味でびっくり。
 

なんだこの、落ち着く感じっ!

 

 

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中沢さんいわくドアの横にある「いらっしゃいませ 営業中 です」のほっこり看板がこの空間を予想するヒントになっているそうです。
うーん、言われてみれば、たしかに。

 

 

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とっても物腰のやわらかい控えめなママさんからお水を受け取って、昔ながらのメニュー(そして値段)にわいわい言いながら注文を。

休憩しながら中沢さんの劇団「劇場実験室カフェシアター」が今後予定している公演情報などもお聞きしました。

みなさん興味津々です。

 

 

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お茶休憩を終えて、最後は番外編の「和光照明」へ。

こちらは中沢さんが営むあかりとアンティークのお店です。

 

 

 

 

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このなんともいえない幻想的な空間で、中沢さんが過去に出演した寺山修司監督作品「田園に死す」のサントラをレコードで聴いて本日のまちあるきは終了です。

 

さあ~さあ 空気女だよ!
一分間に一キロもふくらむ
世にもあわれな 空気女だよ!
ほーら、ふくらむんだ! ふくらむんだよ!
男に捨てられるたびに ふくらむんだよ!

 

 

店内に響く中沢さん演じるサーカス団長の呼び込み声。
 
一瞬ですが、まちあるきをしているということすら忘れてまた別世界にいざなわれたような感覚に陥ったのでした。

 

 

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(同行:大日方)

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