門前の編集者に会いにいく
2018年8月18日
9:00~11:00
参加者: 5人
【案内人】稲田英資
株式会社JBN
【プロフィール】
Webサイトを企画・制作・運用する株式会社JBNに勤務。Webと企業が重なりあう場所についてイベントを企画・開催しています。ネオンホールで『漫画とか部』も毎月開催中。
【コース案内】
門前にはさまざまな編集者がいて、彼ら彼女らが生み出す雑誌やフリーペーパーやCDもあって。それもまた、ぼくたちが暮らす街の要素のひとつで。そんな編集者たちに会いに行きます。
【コース】
東町ベース
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信濃毎日新聞(編集室いとぐち代表 山口美緒さん)
山口さんがこれまで編集・執筆されてきた『信州蕎麦ごのみ』や『信州の発酵食』といった書籍についてお話を聞きます。場所は発行元の信毎で。
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ch.books(島田浩美さん)
本屋でもあり、編集・デザイン事務所でもあるch.booksが発行するフリーペーパー『チャンネル』。多彩で賑やかな冊子たちはどのように作られたのでしょうか。
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株式会社JBN
長野県企業のWebサイトを企画・制作・運営している制作会社。企業のWebサイトはどんな考えで作られるのか紹介します。
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ネオンホール(大沢夏海さん)
ライブハウス・小劇場のネオンホールは、月刊のフリーペーパーを百号以上出し続けたり、演劇のパンフレットを出したり、音楽アルバムを出したり。実は豊かな編集スポットの一面をお聞きします。
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ナノグラフィカ(清水隆史さん)
ミュージシャンであり、写真家の清水さんが長年発行し続けている『街並み』。この冊子を通じて、清水さんは街をどのように見て、編集しているのか。お茶を飲みながらお聞きします。
朝8時40分。「おはようございまーす」と集合場所に現れた案内人の稲田さん。後から来られた参加者と挨拶を交わし「今日はなんで参加しようと思われたんですか?」「ふだんは何をされてるんですか?」とさっそく談笑がはじまりました。自然と輪になって楽しそうです。
出発前の簡単な事前説明を行い、いざ出発。
「今日は僕の好きな方々を訪ねます」と稲田さん。
さっそく醸し出したのは、自分というより相手を引き出すような黒子感でした。歩いている最中も参加者の興味に共感したり街並みに詳しい方(参加者)の解説にうんうんと頷きつつ終始ふんわり先導。
あっという間に信濃毎日新聞社到着。
こちらで本日の“門前の編集者”1人目、「編集室いとぐち」代表・山口美緒さんにお話を伺います。
以前は地元出版社で長野県の食、文化などを伝える雑誌の編集に携わってらっしゃった(編集長もされていた)山口さん。
おいしいものが大好き。おいしいお酒も大好き。ということで、信濃毎日新聞社からはそんな「好き」で繋がった縁で『信州蕎麦ごのみ』や『信州の発酵食』など、食関連の書籍を発行されています。本紙では旅やワインに関する連載もされていたとか。
こちらは飯山観光局と制作した「地元密着型旅プランの“背景”」にスポットをあてた小冊子。何気ない景色や人にも物語があり、こんなにもおもしろい。ということを誇張するわけでもなくしっかり伝えています。
「NAGANO WINE応援団運営委員会」という、NAGANO WINEのプロモーション活動をする民間有志団体の事務局もやられているそうで、その一環で毎年開催されている「ワイン&シードルガーデンin NAGANO」のチラシもいただきました。
お話を伺っているとお仕事はどれも楽しそう。
「編集者って儲かるんですか?」との直球質問に「儲かりたいですよ(笑)」と吹き出す一コマもありましたが、儲かっているかどうかは別として、そのたたずまいやお話からはとてもすっきりと日々の生活を楽しまれている印象を受けました。自身の生活にも何が大事でどうやって過ごしていくのかという編集が行き届いているのかもしれません。
ちなみに先日受けた健康診断ではお酒好きにもかかわらずガンマ値が低かったそうです。「これでまたおいしいお酒が飲める」ふふふと笑う山口さんでした。
お次は南県町の「ch.books」さんへ。
本日の“門前の編集者”2人目。島田浩美さんにお話を伺いました。
大学卒業後、世界一周旅行を経て地元出版社で編集長兼飲食店店長をされていた島田さん。不夜城だった職場から同僚デザイナー青木さん(下写真左)と卒業し、「ちゃんと寝る」「ちゃんとアイディアを練る」という意味を込めた「ch.books(チャンネルブックス)」を立ち上げました。1階は新刊の本屋と喫茶、2階は編集・デザイン事務所として運営されています。
立ち上げ当初、自己紹介の意味も込めて発行していたフリーペーパー「チャンネル」。
これがきっかけで「こんなのもできる?」と依頼を受けるようになり、数珠つなぎで広がった仕事で現在は手一杯の状態にまでなったそうです。そのため現在は休刊状態ですが、「チャンネルの復活」は当面の目標。自分たちの媒体を発行するのは依頼された仕事とはまた違ったやりがいもあり、こういった形で情報を発信していくことでまた集まってくる情報もあるのだそうです。
こちらは飯綱町と制作した『IIZUNA100』という冊子。
町のこれからを担う若手100人を1人見開き1ページで紹介しています。芸能人でも有名人でもないけれど、ひとりひとりのエピソードや表情には思わず引き込まれるものがありました。欲しいとの声が多数上がりましたが、そもそも町民向けに作られたものなので飯綱町内でのみ配布されているそうです。公共施設などにあるそうなので、欲しい人はぜひ飯綱まで行きましょう!
※サイトもあるので気になる方はこちらもご覧ください
さぁ、時間が押してまいりました。
しかし事前シュミレーションですでに時間不足を自覚されていた稲田さん。「ここはさっくり行きます」と、自身がお勤めされている「株式会社JBN」へ。
Webサイトの企画・制作・運用をされているこちらの会社。企業相手に10年間で500サイトほどの制作実績があり、近年はWebサイトを通じて企業の課題を解決に導くためのセミナーも企画運営されています。
そもそもWebサイトは「作る」ことが目的ではなく「伝えたいことが伝わる」「成果が上がる」ためのツール。受ける仕事は単なる受発注の関係ではなく「パートナー」としてその本質を共有することを大切にされているそうです。
実は事前のメールのやり取りで「どんな方がいらっしゃるかによって訪問先の質問もあらためて検討したい」とおっしゃっていた稲田さん。JBNさんのお仕事のスタンスを伺って、「人に伝える(伝わる)」ということを大切にされているんだなと妙に納得してしまいました。
2階。セミナールーム。
こちらではセミナーだけでなく懇親会なども行うそうです。
その際はロジェさんや丸本洋酒店さんなど、ご近所のプロフェッショナルに「今日はこんな方たちが集まるこういう会なんですが」と相談して、「それならこんな料理はどう?」「こんなお酒もいいんじゃない?」とサポートしてもらうこともたびたびあるとか。
自分たちが発注側に立っても「課題を共有して一緒に考えればもっと良いものが生みだせる」というスタンスを自然に貫かれているんですね。素敵だ!
本当にさっくり切り上げて、権堂町の「ネオンホール」へ。
本日の“門前の編集者”3人目。大沢夏海さんにお話を伺いました。
1992年、音楽やアートの表現の場として地元大学生らによって誕生したネオンホール。
フライヤーやフリーペーパーの制作は、初代メンバーらがもともと好きでやっていたことが今日まで受け継がれているネオンホールのある種のカルチャーです。
CDアルバム制作も多数。
フリーペーパー「NEON TALK」。
ネオンホールの月刊予定やコラムなどが掲載されています。「100号以上出し続けているんですよね?」との稲田さんの問いかけに「あ、いや、200です…」と夏海さん。…200!(数だけがすごいわけではない)
劇作家・演出家の柴幸男さんが1ヶ月間ネオンホールで滞在制作した「四色定理のセブンス・コード」の記録冊子は、せっかくだからまとめたら面白いんじゃないかということで制作されたもの。
実は専門的な勉強をしていた…わけでもなく、出版社にいたわけでもない夏海さんが「こういうやり方しか知らないからこうなってるだけ」ということでこうなっている冊子です。(写真も文章もイラストもデザインも外部発注なし)
独学や初代メンバーとの現場で感覚的に身につけてきたであろういろいろな力、、本当にすごいです。
稲田さんは、毎月こちらで「漫画とか部」も開催されています。文字通り「漫画とか」何でも持ち寄って好きなところを発表しあう会で、夏海さんと一緒に「漫画とか部通信」も発行中。
訪問先で珍しく自分のエピソードをたくさんしゃべる稲田さん。本当にネオンホールが好きなんだろうなぁ。
最終地「ナノグラフィカ」到着。
ソファーでぽつんと待っていてくださったのは、本日の門前の編集者”4人目、清水隆史さんです。お待たせしました!
ミュージシャンであり、写真家でもある清水さん。
ナノグラフィカでは『街並み』というまちの日々の営みを切り取った写真集を制作。新聞や地元フリーペーパーや商業団体の広報誌などでも連載を持たれていたり、ラジオパーソナリティーとして長野のカルチャーを紹介していたこともありました。先ほど伺った「ネオンホール」の初代立ち上げメンバーでもあります。
「これを見ろ」というより「これが面白いと僕たちは思っているので一緒に見ませんか?」というスタンスで始めたネオンホール。3年、5年と続けていくうちに、ストリートカルチャーを扱う媒体がほとんどないことから「やるだけじゃなくて伝えること」「長野の文化を一緒に考えていくこと」も大切だと思い始め、それがナノグラフィカの誕生につながったそうです。
当時、長野は中央都市のもの、こと、情報を消費することが主流でした。
でも「Paris」「London」「TOKYO」と写真集があるのになんで「NAGANO」はないんだろう(長野もけっこういいのに)と思っていた清水さんは、地元出版社に企画を持ち込み2004年頃から長野のカルチャーシーンに携わる人々を紹介する「NAGANO STYLE」という連載も始めます。
大発見でもないけどあまり知られてもいない長野の街並みを紹介するコラム「見慣れた街・見知らぬ表情」も長野商工会議所の会報誌で130回以上続く名物連載に。連載は冊子にもなり昨年から販売もされています。
ネットによって文化がフラットになってきた昨今は、「長野である」ということより、「長野のまちを構成するベーシックな要素(人や景色)」にアイデンティティを感じ、自然と目が向くようにもなってきたという清水さん。
「クレバーそうに見えるけど、清水さんの基本はそのものに対する“好き”という気持ち」と解説する稲田さん。
たしかに自分のことを説明するときは理路整然と話し、きりりとした表情をされているのですが、写真を紹介する清水さんは単純にとても楽しそう。被写体に関するエピソードが次から次へと溢れて止まらないのでした。
清水さんのお話を伺いながら思い出したのは、この日、たびたび稲田さんが口にした「それはどういう視点ですか?」という編集者の方々への質問。
表現に差はあれど、みなさんに共通していたのはそれぞれの「好き」や「楽しい」が軸足にあるということだったような気がします。
(同行:大日方)
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