記憶を確認しにいく
2023年10月31日
10月21日(土)13:00~15:00
参加者:6人
【案内人】
鈴木 幸野 《 すずき ゆきの》(美術館学芸員)
美術館で収蔵作品の保存管理や展覧会運営などにたずさわっています。仕事柄、イメージやものに、歴史を重ねて見る価値があるようです。
【コース案内】
気にはなっていたけど、なんとなくそのままにしてきたものを、もう少し詳しく知るための素朴かつ個人的な散歩を、僭越ながらご一緒に。みなさんや訪問先の方々とおしゃべりしながら、人の営みに近い「歴史」めぐりをゆるりとできたらと思っています。
【コース】
楽茶れんが館
➡松葉屋
お店の壁際ぎわにたくさんの一枚板が並んでいます。
➡図書・古本&ギャラリーマゼコゼ
お店のキッチンにたくさんのお皿が積まれています。
➡画材マチス
お店のショウ―ウインドウに気になる額縁が置かれています。
➡藤田九衛門商店
お店の脇にたくさんの薪が積まれています。
➡城山公民館
公民館の庭にたくさんの趣味の木が植生しています。
➡長野県立美術館
美術館の屋上で秋の日差しを浴びながら、ご一緒にソフトクリームなどを楽しみましょう※実費
《出発》
➡松葉屋 【 記憶①お店の壁際ぎわにたくさんの一枚板が並んでいます。】
案内人:「外から店内をチラ見するんですが、素人なので展示されているラグやテーブル板も一様に同じにみえてしまって、、
実際のところ替わってるのかなって?あの象の彫刻はなんの意味があるの?って考えていつもここを通り過ぎます」
松葉屋家具店の店主 社長の滝澤善五郎さん。
「板や椅子は販売したり、フェアー等で陳列で移動したりしますので、同じところにはおさまっていません。ギャッベもイランに度々買い付けにいってますがら、新商品にどんどん入れ替わっていきます」
お店で取り扱っている木は楓、ブナ、ヒノキといった8種類でほぼ落葉樹、常時50枚の板テーブルが展示されています。いったいこれらの巨木をどこから集めてこられるのかなー、しかも植林ものでは樹齢が浅いし、200年前後からの天然木しか利用できませんしなーぜなーぜ。
その答えは、いくつかの調達ルートがありまして、問屋さんから、公園の木が立ち枯れる前に、林道をつくる際に、ご近所さんが庭木を処分するときなど様々なご縁があって仕入れることができるとのことです。
松葉屋さんが商品化するにあたり大事にしていることは、市場では凸凹のないことが良材と呼ばれることが多いのですが、虫穴、ふし、病気、腐れについてはすべてそのままを残し活かすようにしているとのことです。風雪に耐え生きてきた生涯のありのままの姿が最も尊く美しいですよね。
善光寺門前の松葉屋家具店 | 一枚板テーブル、ギャッベ、学習机 (matubaya-kagu.com)
➡図書・古本&ギャラリーマゼコゼ 【 記憶② お店のキッチンにたくさんのお皿が積まれています]
わんちゃんのお出迎えです。
店主の小池つねこさん。
壁を打ち抜いてラウンジを広げられて居心地がよくなりました。カフェを再開しました。コーヒーを飲みながら、本をよみながら、わんことじゃれながら、ボーとしたり、空想したり自由にすごせそうですね。本棚も各ジャンル網羅しています。
案内人:「いつもこの皿が積みあがっていて、いつ崩れ落ちるのではないかと不安定さにハラハラドキドキしてしまうのです。地震とかあったらどーなっちゃうんだろって他人事でない自分がいます。」
小池さん:「このお皿も作家さんたちの手づくりで、いろんな形あり、色ありでまさにお店もマゼコゼというくらいですから均一性とか統一性とかないかも。積み方も気にしてませんでした。人にも言えることですが、色々なものがつながっていってくれたらなって面白いなって、多様性を大事にしています。旦那が空間デザイナーなのでこのキッチンも造ってもらって、その感性が行き交うのもまた刺激的です。ご来店いただければ、何かどこかひっかかるところが必ずあると思いますので、期待してください」
これがマゼコゼワールド!
2階で探検植物作家 、二名良日 (フタナヨシヒ)氏の「植物の輪」の展覧会が開催中でした。型破りな方の作家さんたちと出会えそうです!
愛犬わんこがお見送りしてくれました。まったね。
➡画材マチス【 記憶③ お店のショウ―ウインドウに気になる額縁が置かれています。】
案内人:「この前を通るたびにまだあるなぁ~欲しいな~けどたぶん他に買う人もいないだろーし、また次の機会にしようって行き帰りしてる間に気づけば5年も経っていました。よくも売れずに残っていてくれてました。」
案内人:「これこれ、今日は、私を見て見て感がはんぱないです」
ここの店では、マニアックな展覧会の情報が得られるとのことです。上棚の彫刻も年に1,2体は売れるそうですが、趣味人が買われていくそうです、趣味人?。
説明中、鈴木さんの頭の中は、70%、どーしようかな、あの子、今日連れて帰るかな。残りの30%は、残りのまちあるきの展開をどーしていこうかな?
案内人:「わたくし実は今日が誕生日なんです、とうとう買う決心がつきました!まちあるき記念です」ていうか、この額縁のデザインはなかなか個性が強めなので、相性のよい絵を見つけるもの大変そうです。そこは額縁も購入者を選んできますし。条件のよいご主人に恵まれました。どんな作品とマッチングされたのか、またお知らせくださーい!
➡藤田九衛門商店【 記憶④ お店の脇にたくさんの薪が積まれています。】
案内人:「ここを通れば、いつも薪がきれいに積まれているなって。積む方はきっと几帳面ですよね、どんなこだわりがあるのかがずっと気になっていて、管理しているご本人にいつか聞いてみたいなって。」
案内人:「薪はいつもきれいに積まれていますね。薪は鯉焼きの味に影響するんでようか?」
店主さん:「ったく関係ございません。煙からみだと、そこのストーブは漆喰で塗り固めたかまどで、中はロケットストーブといいまして、ススまで完全燃焼させるんで煙突から煙がでないんです。厚みは30cmあるので火傷はしないし、何も燃やしてもイケます。エコです」
「薪の積み方のコツは、両端をまずキメることです。格子状に組んで門柱のように固定させて、それから真ん中に重ねていくんです。薪の種類は十色ですが、広葉樹が火力が強いのでそれを使います。きれいに積んでいるのは、単に雑だと朝からのスタートが気持ちよくきれないから。たまーに誰かがごみの木っ端をほかっていくこともありますが、コスト的にはOKです。人の家で飛び出ている薪を見かけると、コンコンと揃えたくなります」
店主:「鯉恵比寿を自前でつくりました。西宮神社さんにも奉納しています。毎年一体ずつ神社に奉納していているんですよ。ちやんと信州中野の土人形仕立てにして、そこぎょうさんこだわってます。鯛恵比寿にしっかり乗っかりました」
「おかげさまで、創業10周年を迎えることができました。ありがたいことです」
藤田九衛門商店|善光寺門前にある信州鯉焼きの菓子店 (fujitakuemon.com)
➡城山公民館 [ 記憶⑤ 公民館の庭にたくさんの趣味の木が植生しています。】
今立っている場所は、横山城二の丸?でしょう。築城はもっと古いんですが、歴史の表舞台に出てきたのは川中島の合戦です。川中島の合戦で旭山城に陣を敷いていた武田氏に対し、上杉氏は葛山城とここ横山城を拠点とし謙信も着陣していた時期があります。善光寺の東方の高台に立地し善光寺平が眺望でき、東側は急崖で、今の県立美術館のあたりは窪地で湿地帯であったことから築城にはまあまあの場所ですね。政治的にもよい場所だと思います。
現在はこの一帯は城山公園として整備されており、本丸跡には1879年(明治12年)に健御名方富命彦神別神社の社殿が鎮座しています。土塁はすぐに確認できますが、藪に入り込めば空堀、堀切、曲輪跡も見つかるかもしれません。歴史の息吹が聴こえてきます。
案内人:「城山公園は1900年(明治33年)に皇太子(のちの大正天皇)の成婚記念として整備されたのが始まりです。戦後になると県立美術館の周辺はGHQに接収されて、アメリカの図書館や日米文化センターが設営されます。その後、SBC信越放送さんが美術館をつくりまして、数年経て長野県の美術館に移管されました。現在の県立美術館に至るまでにいつくもの襷がつなげられてきました。」
公民館の裏からはこの風景を見られたことはないでしょう。上から見渡してもよく整備されていますね。
➡長野県立美術館
肌寒かったので、アイスクリームはまたの機会にしましょう。
美術館学芸員さんの一日のお仕事の流れや企画展の苦労話などその業界の方でないとわからないネタ話をしてくれました。専門は西洋絵画のなんやらでおそらく相当に専門家で、私たちには優しく手ほどきいただいたのですが、なんせ「ギャラリーフェイク」の漫画知識ではイメージがおいつかない、もっと教養高めるぞ!ってその時は思ったのですが。温かめのホットコーヒーを飲みながらしばし今日の振り返りをして解散となりました。豊かなバックグランドから裏打ちされた視点のユニークにハッとさせられっぱなしで、ツボるまちあるきになりました。
【おまけ】
帰り道の善光寺へ寄って、これ買いました!
(同行:高野)
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