REPORT

小さな空き家巡り

2024年7月16日

7月13日(土)14:00~16:00
参加者:8人

【案内人】
安東 真生 《 あんどう まさき》(R-DEPOT マッチングガイド事業部)

信州大学建築学科卒。R-DEPOT社員として、善光寺門前で事業を始めようとする人のサポートをしている。建築が好きで空き家をかっこよく活用したい。趣味はカメラ。

【コース案内】

善光寺門前の小路を入って行くと、ポツポツと小さな空き家が現れてきます。こじんまりとしていて大きな事業をするには向かないかもしれないけれど、昔は豆腐屋だったり魚屋だったりお店が営まれていたようです。小さくて狭い、けれど豊かな空間を持つ空き家を紹介します。スリッパの持参をお願いします。

【コース】
楽茶れんが館

田町の元豆腐屋

一階には豆腐屋を営んでいた時の名残りが。表構えがすでにかっこいい。

田町の元寝装店舗

寝装展→タイ料理屋→アトリエ兼住居→学生団体拠点→空き状態とユニークな変遷を持つ建物。安東が1年住んでいた。

岩石町の元魚屋

隣はハンドメイド作家さんのアトリエ店舗があり、小さくも豊かな空間の先輩がお店を構えている。

大門町上堀小路の元下宿

善光寺七小路の一つである上堀小路の途中にある建物。昔はこの小路にも商店が並んでいたとか。

➡R-DEPOT

空き家の掲示板や相談出来る人が常駐しているので、気軽に話を聞ける。

7月13日(土)、株式会社R-DEPOT マッチングガイド事業部安東真生さんの「ながの門前まちあるき」を開催しました。今回の案内人安東さんは、普段株式会社R-DEPOTの社員として、“まちに引き継ぎたい建物の魅力を伝えながら、善光寺門前で事業を始めようとする人のサポートをし、建物やまちが人々と繋がる場を設ける”という素敵なお仕事をされています。大学も建築学科を卒業されていて、今回のコースはとても専門的な角度から、門前の小路にある空き家を巡る“小さな空き家巡り”です。

この、ながの門前まちあるきは、中心市街地活性化協議会が実施する“遊休不動産活用事業”の一環として行われているのですが、中心市街地には空き家や空き店舗が多くあります。長野市だけでもなんと8,000件はあるそうです!

今回のコースは、正にそういった遊休不動産を巡って、実際に触れることができる貴重な体験のまちあるきとなりました。

小さくて狭いけれど、お豆腐屋だったり魚屋だったり、かつての営みや豊かな空間を持つ空き家の雰囲気に触れたり、そのまちの歴史や名残を感じ、そんな“あの頃”に思いを馳せながらまちを歩けば、知らなかった新しい発見にも出会えます!懐かしさと発見がたくさん詰まったまちあるきでした(*^_^*)

まず最初は、楽茶れんが館の裏側駐車場に出ると見える建物から。善光寺周辺にはいくつか小路があり、そのうちの一つ“上堀小路”を入ってくると辿り着きます。

門前まちあるきでもお馴染み、人気のマリカブルーイングさん。クラフトビールといったらココ!ですね(^_^)こちらの建物も、「武井工芸店」の倉庫や木彫り教室などに使われてきた築40~50年の蔵風の建物をリノベーションしています。

大門町上堀小路の元下宿

今回のコース4番目の空き家は、この並びにある建物です。こちらは今回は外から拝見します。以前は、下宿として何名か住んでいたそうです。(※なお今回は、該当建物の写真掲載は控えさせていただきます。ご了承下さいませ。)

案内人の安東さんは建築学科を卒業されているので、「建物の構造や以前はどうやって使われていたのか」など気になって、「こっちが入口だったのかな?」とか想像しながら建物も見るのも楽しいそう。

かつては、この通りは、お米屋さん、歯医者など商店が並んでいたけれど、今はほとんど駐車場になってしまってもったいない。昔みたいに賑わったらいいね!と武井工芸店の店主さんは仰っていたそうです。このように、周りの方々も、空き家が活用されることを歓迎されているようです。

今回のコースには載っていませんが、道中には様々なスポットがあります。

こちらの建物は、門前のリノベーションを語る上では外せない「KANEMATSU」。善光寺界隈のリノベーションが盛んになった走りとも言えます。

岩石町の元魚屋

次に向かうのは、今回のコース3番目の物件。西宮神社東側の路地を入ったところにあり、隣にはハンドメイド作家さんのアトリエ店舗があります。(※なお今回は、該当建物の写真掲載は控えさせていただきます。ご了承下さいませ。)こちらは実際に中に入らせていただくことができました!中には、当時の家具や足踏みミシンも置いてあったり、「なぜここに小さな階段?」という不思議な箇所があったり…。

案内人安東さんの建築目線から見ると、昔からある建物だと恐らく下の階のお風呂とか無かっただろうから、必要な所を自分たちで増築し、足りない空間を付け足していったのでは?」とのこと。そしてここは、お隣も魚屋さんの長屋でした。「長屋は、天井の裏まで到達させた壁一枚でお隣と繋がっています。」という安東さんのプチ建築講座もとても興味深いです!

小さいけれど、当時の豊かな空間が目に浮かぶような懐かしさとレトロ可愛さが感じられる場所でした!

元魚屋を後にして路地を下っていくと染物店さんがあったりし、鐘鋳川にぶつかります。裾花川と接続する川です。この辺りは断層によって地形ができているため、高低差があります。この地形の高低差は、1年に1mmぐらい上にズレていって約2000年の時をかけて2mぐらいずれ上がってできた場所だそうです!その断層沿いに鐘鋳川が流れ、昔は川がとてもきれいだったので、染め物屋や醬油の工場など水に関わるお店があったそうです。(!だから坂の途中に染物店があったんですね!!)

そんな、町の歴史も知りながら歩き、途中にある(コースにはありませんが)“案内人安東さんが気になっている建物情報&プチ建築講座”も大好評!

これは“看板建築”という建築様式で、建築学生に人気の建築デザインです。笑

元々はお寿司屋さんで、おそらく、この辺りにも商店街があってお隣さんと密接に繋がっていたのではないかと想像するそうです。道路側の全面を看板のように仕上げる看板建築で、裏側は切妻屋根で普通の住宅だけれど、表の構えをきれいに整え立派なお店に見せる工夫がされ、その時代の大工さんもデザインにこだわって作っていたりする。「昔の、その商店の風景があるからこういう建築形式がある」、こういったところを活かして新たな店舗にリノベーションするのもおススメとのこと。さすが、プロの目線は違いますね!

因みに、「あいづや」さんは、先ほどの鐘鋳川の醬油工場だったところで、今は駐車場になっていますが、駐車場名を、そのまま残しているそうです。

黄色い看板が目印の「宮野屋」さんも、この鐘鋳川を境にして田町はかつて田んぼが広がっていたため、その脇で“農機具屋”を営まれていました。

さらに進むと水門に辿り着きます。鐘鋳堰です。北から鐘鋳川(かないがわ、鐘鋳堰=かないせぎ)、八幡川(八幡堰)、四ヶ郷用水などがあり、農水省の疎水百選にも選ばれています。長野市北部市街地を流れる善光寺平用水の一つ。

善光寺平用水は、市街地のほうが上流で、灌漑する農地が下流側にある珍しい用水形態で、この鐘鋳川は断層沿いに北側の傾斜に向かって流れているそうです。田町の田んぼに向かって流れる農業用の用水路で、反対に振り向けば、田町の農業の繫栄と豊作を願って稲荷神社にお参りに来る要の場所だったそうです。

普段何気なく通って目にしていた街の景色の、あいづやさんも宮野屋さんも鐘鋳川も水門なども、今回のコースには載っていませんが、次の目的地までの道中だけでも、かつての街並みと町の歴史に触れられる場所がこんなにあるんだという事を改めて気づかされました!

コースには載っていない“安東さんのプチ講座”はまだまだ続きます!こちらもリノベーションされたカフェと古着屋の人気のお店です。お互いの店主さんが同級生で、1階と2階にそれぞれお店を構えています。1階が定食ありのカフェ「ポルカドットカフェ」、2階が欧米のインポート古着が充実している「コンマ」。

この建物は半分に切られていますが、「道を拡幅する際にこうしたのか…」、「こんなにきれいに切れるものなのか…?」、「この技術どうですか?」、「棟が残されているから…」、など、今回参加者さんの中に大工さんもいらっしゃったので、こんなコアなトークも繰り広げられていて、他の皆さんも興味津々でした!

まだまだリノベーション物件もあります。こちらは、レザーアイテムほか、天然繊維で作る男女兼用の洋服や小物を販売している「インスワール」。2階が工房になっていて、1階で販売をしています。こちらも、“看板建築”です。80年ほど前に、ふたつの建物曳家でつなげた古民家ですが、注目ポイントは“看板”です!歴代営まれてきたお店の看板がそれぞれ残っていて、外観はいじらず中だけを整えて次へ次へと引き継がれてきました(建具工務店(YKKアルミサッシ)→コインランドリー→インスワール)。なので、お店が変わっても「ああ、あの建物ね!」という地域との信頼関係にも繋がっているそう。

なるほど!!納得です。

ここは今売地になってしまいましたが、以前は工務店の建物があって、それがまたカッコイイ建物だったそうで、「解体されてしまって悔しい…」と安東さん。

また、田んぼが広がっていた田町に道ができ始めると、建物も建ち始め、次第に建設業関係のお店や職人が住むまちになっていきました。なので、この辺りには、工務店、問屋、建具屋などの建物が残っています。

田町の元寝装店舗

ここまでたくさんのプチ講座とともにまちを歩いてきましたが、次の建物は、今回のコース2番目の物件。寝装屋→タイ料理→アトリエ兼住居→を経て、安東さんが学生の頃運営されていた学生団体の拠点かつ、ご自身も1年間3階に住んでいらっしゃった場所です。(※なお今回は、該当建物の写真掲載は控えさせていただきます。ご了承下さいませ。)こちらは実際に中に入らせていただくことができました!

1階は元々壁がなくガレージがあったこと、それを、アーティストの方が入居されてた時には、窓などを整えて外から作品が見えるようにして、壁もアーティストさんが何カ月もかけて白く塗り替え展示スペースに変化したこと、安東さんの学生団体の拠点だったころは、1階でフリーマーケットをし2階の畳のスペースでは“ジャズ研”を呼んでコンサートを開いたり、3階に住んでいた頃は権堂のアーケードが見える立地で、窓から見える景色と入ってくる風がとても気持ち良くて、楽しかった思い出をお話してくださいました。

そんな話を聞いていると、自然と、皆さんも、「こんなことやれそう」、「こういうことやってみたい」、など夢が広がるトークで楽しまれていました。中には、実際、ゲストハウスを事業継承して運営している方々も参加されていて、興味深くご覧になっていました!何か次に繋がるヒントや発見があると嬉しいですね。

本日最後の目的地に向かう道中、かつて、このエリアは、田町の中でも料亭エリアだったそうです。現役稼働している昔からの古い建物もあれば、振り返れば、料亭の姿がなくなってしまった風景もあり、また、駐車場になってしまった場所は芸子さんの待合所だったり、そういう風景のあったまちでした。時代とともに、すっかり変わってしまいました。

善光寺さんと、精進落としの花街として賑わい繁栄した時代に想いを寄せてみるのもいいかもしれません…。

田町の元豆腐屋

今回のコース1番目の物件で最後にお邪魔させていただいた建物です。(※なお今回は、該当建物の写真掲載は控えさせていただきます。ご了承下さいませ。)こちらも実際に中に入らせていただきました!

早川豆腐店さんで、他にも、以前は田町に4軒ほどお豆腐屋さんがあったとか。中には、当時のお豆腐を作る時の道具が残っていたり、こちらにも足踏みミシンがあったり、昔ながらの土壁だったり、ワクワク要素が詰まっていました!また、管理されている湯本さんにもご案内いただき、町の歴史や移り変わりなど貴重なお話も聞かせていただきました。最後に、「この建物の使い道、アイディアがあればぜひ!」という湯本さんの言葉が印象的でした。

空き家巡りを終え権堂アーケードに出ると、祇園祭前日とういこともあって、屋台とお囃子に遭遇し、賑やかでした♪

名物、権堂の七夕まつりも始まります!夏ですねぇ(*^_^*)

R-DEPOT

安東さんの職場でもあるR-DEPOT。大家さんに話を聞きに行き、町の歴史や建物の歴史を聞きながらその大家さんと関係性を築き、新しく使ってくれる人にその場所を紹介できれば、という思いで日々活動されている安東さん。ご自身も、色々なお店や好きな建物の部類を見て歩いたりされるそうなので、そういったところも共有できたらいいな、と今回案内をしてくださいました!

門前まちあるきではお馴染みの場所ですが、これまでは、どちらかというとコワーキングスペースとして訪れることが多かったので、いつもと違った角度からの訪れることが出来たのも、また新たな魅力発見です。

今回のまちあるきは、遊休不動産の空き家や空き店舗を活用している事例だけでなく、まだ活用できていな部分というところにも実際に触れることが出来、それと同時に、そのまちの歴史やその建物の歴史や背景など深いところまで知ることが出来たとても貴重なまちあるきになりました。

告知期間も短かった今回ですが、SNSや直前のNHKラジオを聞いて東京から参加されたり、古民家が大好きな方、古民家活用のお仕事をされてる方、移住を考えてる方、大工さんなどなど、沢山の方にご参加いただいたので、今回のまちあるきをきっかけに、町を調べてみたり、歩いてみたり、そしてまた新たなまちの魅力を発見していただいて、これからの皆さんの何かプラスに繋がる材料になってくれたらいいな!と思いました。

まちあるきの楽しさを再確認することができた気がします♪

 

≪同行記録:宮島麻由子≫

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